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『はぁ…?わけわかんねぇ?』
『時ちゃんはわしの初恋の人なんじゃよ。だからのう……特別に霊感をプレゼントしたのじゃよ』
『じいちゃんって、時ばあちゃんと同じくらいの歳なのか?』
『いや……わしは時ちゃんより何倍も歳を取っておるが、永久不滅なんじゃよ。たまに下界に降りると、その……人間に恋をしちゃうんじゃよ』
『神様のくせに、ありえねぇな』
本当にありえねぇから。
地上界に降りては人間に恋をするようなじいちゃんが神様だなんて。
神様が惚れた女に霊感をプレゼントするなんて、聞いたこともねーぞ。
でも、本当に3つの望みを叶えてくれるなら……。
とりあえず、信じた振りをしてみるか。
『じゃあ、最後の願いごとは、1日だけお前を蘇らせてやろう。その1日はお前が心底里央ちゃんに逢いたいと願った日に叶えてやるからのう。あとひとつ、願いを叶えることが出来るがどうするんじゃ?』
『もう一つは待って……、ゆっくり考えるから』
『なんじゃ、見かけによらずなかなか慎重なんじゃのう。まぁよい、あとひとつは保留にしておいてやるわい。空は飛べなくていいのか?』
『それはいいや。もったいないから』
『そうか?じゃあ今日から里央ちゃんと話が出来るぞ!んー……エイッ!』
じいちゃんは俺の頭上で杖を振った。
しかも1回きりだ。
何だよ?何も変わんねぇじゃん。
胡散くせぇなぁ……。
これ、オレオレ詐欺を真似た神様詐欺か?騙してあとで金銭要求するとか?
俺、じいちゃんにからかわれてるのかな?
まっ、いっか……。
マンションに帰宅したら、このじいちゃんが本物の神様かインチキ詐欺師か、わかるんだから。
『お前……わしを疑っとるじゃろう?』
じいちゃんが横目で俺を見た。
『いや……疑ってねーよ。信じてるから。じいちゃん、サンキュー!これで里央と話が出来んだよな?』
『ああ、そうじゃよ。じゃあわしは一先ずこれで天界に戻るとするわい。チャオ?』
じいちゃんはニンマリ笑うと、杖を大きく一振りし、一瞬にして消えた……!?
嘘っ……!?
消えたし……!?
じいちゃんは、売れないマジシャンか?
それとも、本物の神様かな?
まじでありえねぇ……。
狐につままれたように暫く呆然としたが、空が飛べない俺はその日も電車に乗って湘南に移動した。
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