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目の前に、一人の女性が現れた。
横顔しか見えないが、その佇まいから漂うオーラは物凄くまた彼女から感じる魔力は増大であった。
床に着くほど長い緑の髪に、緑の瞳。
その慈しむような視線の先には、先程ルシア達を案内した妖精がいた。
「この森を、救って下さりありがとうございます」
彼女は、こちらに向き直ってそう言った。
「私はノーム。四大精霊の一人です」
そして、深く頭を下げた。
二人はその名を聞いて驚きを隠せずにいた。
───四大精霊。
それは、火、水、風、土の四元素それぞれを司る精霊。そして、その属性の王と言われる。
魔力を生み出す元ともなる、強大であり、我々魔法使いにとってはなくてはならないもの。
その中の一つ、土を司る“大精霊ノーム”が、まさか二人の目の前に現れるとは思いもしなかったのだ。
二人は彼女の前に跪いた。
「ノーム様。初お目にかかります。私の名は.....」
ルシアが自分の名を名乗ろうとした時。
「ルシア。ルシア=リヴェット。魔法が使えない魔法使い」
そう言ってノームは目を細めて優しく微笑んだ。
その笑みはどこかいたずらっぽく、無邪気さを感じさせた。
そして、ルシアから目線を外し、ノアを見た。
「そして、その付き人ノア・イグレシアス。お元気そうでなによりです」
ノアは何も言わず、ただノームに向かって頭を下げた。
「精霊たちが教えてくれるのです。あなた達のことを。ですから、私はこの街のことならばなんでも知っておりますよ。顔を下げる必要はありません。どうぞお立ちになって」
ノームのその言葉に、二人は彼女の様子を見ながら立ち上がる。
「さあ、座って」
ノームはそう言うと、木の根から二つの椅子を地中から生み出した。
二人はそこに座り、彼女の様子を伺った。
「どうか、そんなに固くならないで。私はあなた達にお礼がしたいだけなのです。あわよくば、たくさんお話したいわ」
彼女はどこから取り出したのか分からないティーセットで紅茶を注ぎ始めた。
そしてそれを三人分用意し、また新たに生み出した木の机の上に、紅茶の入ったティーカップをそっと置いた。
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