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「そうだわ。あの青い石は、私のなのです」
ノームは今思い出したかのようにそう言った。
ルシアはおもむろに先程ポケットに入れた青い石を取り出し、ノームに見せた。
「これは、貴女のか。では、あの依頼書を出した依頼主はもしかして貴女なのか.....?」
ルシアがそう尋ねると、ノームは首をかしげた。
「依頼書?.....私はそのようなものは出した覚えはないです」
そう言ったノームに、ノアが依頼書のことについて説明を始めた。
「つい最近、私たちの所属するギルドに、この依頼書が届いたのです」
その言葉に合わせて、ルシアが懐からあの依頼書を取り出し、机の上に広げた。
ノームは身を乗り出し、依頼書を読み始める。
それと同時に、ノアはまた説明を続けた。
「今日、私たちはこの依頼を達成させるためにこの森に来てその青い石を見つけたのです。貴女がこの依頼を届けていないとなるのならば、一体誰が.....」
そのノアの説明を聞いて、ノームは訝しげな表情で紅茶を一口飲んだ。
その行動は、単に紅茶を飲みたかったと言うだけではなく、自分を落ち着かせるためのもののようにも見えた。
そして、ティーカップを静かに置き、ノームは語り始めた。
「.....二週間ほど前の話しです。この森に、“何者”かが訪れてきました。彼らから感じる魔力は凄まじく、危険を感じた私はこの場所に身を潜めていました。その時、この青い石は千年樹の中に、誰にも気付かれぬように隠してあったのです。この青い石には、私の魔力の約三分の一を込め、この森を加護する役割を持たせていました。しかし.....」
「何者かが、この青い石を見つけてしまった?」
ノームの言葉を少し遮るようにルシアは言った。
ノームはルシアを見、何も言わずに頷く。
「誰にも見つかるはずのないものでした。しかし、彼らはそれを見つけて.....」
二人はノームの言葉の先を静かに待った。
そして、また紅茶を一口飲んでから発せられた彼女の言葉に、衝撃を受ける事になる。
「その石の魔力を全て吸い取ってしまったのです」
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