第一章 白髪の魔女

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「ノア」 「はい」  ルシアがその名を呼ぶと、ずっと斜め後ろを歩いていた彼女の付き人──ノアがすぐに返事をする。  真っ黒な髪に、真っ黒な瞳。  ノアの容姿もまた、この国に住まう住民からすれば珍しいもので、彼らの好奇心を煽るのには十分だった。 「あの後ろの子.....」 「綺麗な顔してるけど.....」 「どこか別の国から来たのかしら.....」  その彼もまた、周囲の視線には目もくれず、ただ前を見据えて歩くだけであった。  どこか優雅ささえも感じるその歩き方は、更に人々の視線を惹き付けた。 「今日はこの用事が終わったら寄りたい場所があるんだが、大丈夫か?」  ルシアがチラリと後ろを歩くノアを見る。  ノアは優しく微笑み、すぐに答える。 「もちろん、大丈夫ですよ」  ノアは、ルシアがどこに行きたいのか分かっていた。  ふと、ノアの視界を遮るかのように緋色のもみじが宙を舞った。  ノアは何気なく空を見上げる。  そこには水のように澄みきった秋空が広がり、こちらを見つめているようだった。
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