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「どうだった?」定期試験の後に交わされる お決まりのセリフが教室のあちこちで聞こえている。
「どうだった?数学は。」優香から聞かれたけど、正直 良く出来た気が全くしない。先生も地道にコツコツって言ってたし…。
「とりあえず、明日の日本史の資料集を図書室に借りに行かない?」
「試験終わったのに、まだガッツリ勉強か~。」
「ガッツリじゃないから、資料集なんじゃないの?」
そんな他愛もない話をして図書室に向かい、ドアを開けると、思いがけない声が聞こえてきた。
「この前の返事聞かせてもらえませんか?俺…藤本先輩の事…ずっと前から見てる。ずっと前から好きなんです。」
「私も…早瀬君のこと、好き。どんどん好きになってる。」
「じゃあ…」「でも!!私じゃあ 早瀬君には釣り合わない!みんなの憧れの早瀬君の彼女は、私じゃダメだよ…。」
「みんな なんて関係ない!俺が先輩の事好きで、先輩が俺のことを好きでいてくれるなら!」
早瀬君だ…そしてもう1人は3年の藤本先輩。
藤本先輩の事好きだったんだ…早瀬君。
とんだ場面に出くわして立ち尽くす私と優香に気がついた藤本先輩は私達の横をすり抜けて図書室を出て行った。
早瀬君…
「誰にも言わないで。」
早瀬君も、少し掠れた声でそう言うと図書室を出て行った。
早瀬君…。
早瀬君は、藤本先輩が好き。
藤本先輩も、早瀬君の事が 好き。
たった今知った事実が頭の中をグルグル回ってる。
早瀬君は、藤本先輩が好き。
藤本先輩も、早瀬君が好き。
「優香、ゴメン!資料集、明日でもいい?明日にして!」
「凪…大丈夫?」
「大丈夫!」
私は優香の次の言葉から逃げるように、数学準備室に向かった。
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