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第5話「ほしぞらのしたで」
ダディズリーと別れたあと、わきとクゥはしばらく黙って歩き続けました。
あたりはすっかり暗くなり、空を見上げれば満天の星が瞬いて、時折、流れ星がすっと夜空をはしりました。お月さまも顔を出していましたが、それは普段よく見るお月さまとは少し違いました。
まるで夜空の一部をまん丸に切り取って、そこから真昼の空を覗いたような、淡い青と白のマーブル模様が美しいお月さまでした。
クゥはお喋り好きなようで、はじめこそわきに何度か話しかけたりもしましたが、なにを言ってもわきがうわの空なので、やがて諦めてしまいました。
わきはというと、カナイや熊の兄妹から聞いたことを考えながら、ろくに前も見ずに歩いていました。目線の先では前足が、右、左、と順番に柔らかな草原にそっと沈んでは、後ろへ流れていきます。
わきは物思いに耽りながら歩く癖でもできてしまったようです。
しかし、それも仕方ありませんでした。
ここへ来てからというもの、不思議なことや驚くことの連続で、理解がずっと追いつかないのです。いつか酒場で聞いた野次みたいに、新たな驚きが次から次にやってきます。
わきは初めて、ユニコーンに会うのが怖くなっていました。でも、すべてを諦めて帰ってしまおうとは思いませんでした。
なぜなら…。
「あいたっ!」
わきは何かに頭をぶつけました。顔を上げると、クゥが立ち止まっていました。
「なぁ、どうしたんだ?」
「あら、ずいぶんな言いぐさね。わたし、きちんと声をかけたわよ?」
どうやら下ばかり見ていたせいで、クゥが立ち止まったことに気づかなかったようです。
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