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青いお月さまの薄っすらと柔らかなの光の中で、秋に咲くコスモスのような、春に咲く桜の花びらのような、淡い紫色の毛並みがつやつやと輝いて見えます。
神秘的な光景に、わきは一歩、また一歩と、自分の意思とは無関係に足を進めていました。
すると横でそれを見ていたクゥが、わきの前へ歩み出てユニコーンへ向かってうやうやしくお辞儀をしました。膝を深く曲げてお辞儀をしてから真っ直ぐに立ち上がると、こぐまは、純白のドレスを身にまとった美しい少女へと姿を変えました。
心なしか、ぼんやりと光っているようにも見えます。
「こんばんは、メル。今宵もいい星空ね」
「クゥ…なの?」
わきは口をポカンと開けたまま、閉じることを忘れてしまったようでした。
「驚いた?メル…『虹の継ぐ手』と会うときだけ、元の姿に戻るのよ」
クゥは振り返り、はにかみながらそう言いました。
「そう。それが今も昔も変わらない、我々の【掟】だからね。わき」
ユニコーン…メルが初めて口を開きました。初めて聞くはずのその声は、どこか懐かしく、それでいて、なぜか胸をうちました。
「は、はじ…はじめまして。おいら…わき。どうして、おいらの名前を?」
これまでドラゴンを除いては物怖じすることなく冒険してきたわきでしたが、まるですべてを見透かすようなメルの眼差しに、どこか心が落ち着きませんでした。
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