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そのまま二人並んで歩き、他愛のないことをおしゃべりしながら、もう一方で愛海は、前回の“失恋”を思い出していた。 前の“恋”は、去年のクリスマス前に終わった。 いや、もちろん、何かが始まっていた訳でもないし、それを相手に告げた訳でもないし、明確に拒絶された訳でもない。 愛海の心の中でひっそりと始まり、ひっそりと終わっただけだ。 相手は会社の8つ歳上の先輩女性で、森永千里という営業部の主任だ。 薫子と千里は友人同士で、愛海が、薫子から千里への伝言を託され、それを伝える際に会ったのが初対面だった。 その時はそれだけで終わったのだが、その後偶然愛海の通うカメラ教室でばったり千里と再会し、意気投合。 共通の趣味ということもあってらそれから一緒に日帰り撮影旅行に行ったりもした。 『背の高い、すらっとしたキャリアウーマン』 それが愛海の千里への印象だった。 それ故に、どこかキツく冷たいイメージを持っていたのだが、実際話してみると、細かい気配りのできる優しい女性であることが分かった。 それでいて少し抜けたところもあり、隙が多い。 そんな彼女に、愛海は次第に惹かれていった。
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