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「今日は全員定時で帰れ!」 そう工場長が触れて回っている。 それを聞いた縫製ライン第2グループの本村愛海(もとむら あみ)は、嬉しくなった。 今夜は久しぶりに同期の飲み会があるのだ。 飲み会に誘ってきた総務部にいる大卒で四つ歳上の同期、臼井薫子(うすい かおるこ)は、仕事がどんなに忙しくても毎日必ず定時で上がるので、工場勤務の自分も定時にここを出れば、今日は久しぶりに薫子と一緒に、あわよくば2人っきりで、会場の「居酒屋源さん」に行けるはずだ。 最近、なかなかゆっくり2人きりで話をする時間も取れなかったけど、今日はチャンスだ。 愛海は、はやる気持ちを抑えながら、目の前を流れる製品を早く片付けることに集中し始めた。 アパレルメーカーの株式会社イバタソーイングファクトリーは、午後5時が通常の業務終了時間だ。 だが、工場を管轄する縫製部では、大口受注の納期の関係で、先月までは長時間の残業が常態化していて、毎晩9時近くまでラインを動かすこともザラだった。     
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