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「お待たせっ。待った?」
今日は、桜の撮影会。
待ち合わせていた愛海の家の最寄り駅前のロータリーに、原田から借りた、千里の運転する車がやってきた。
持ち主の原田の体格に合わせた、大型のSUVだ。
意外なことに、原田は車の運転が下手らしく、事故をしても少々のことでは壊れないようにと、大きな車を買ったのだと、千里から聞いていた。
「大丈夫。私もさっききたところ」
「よかった。さ、乗って」
助手席側のウインドウを開けて、運転席の千里が話しかける。
愛海が無意識に後部座席のドアを開けると、千里が突っ込んだ。
「愛海ちゃん?ボケてみた?私、突っ込んだらいい?
それでもさあ、一応前。前に乗ろうよ!」
「ああ、ごめん。トモ君の車の助手席に私が乗っちゃ悪いかなーって思ってさ」
もちろんそれは後付けの理由で、ただ単に千里の隣の助手席に座るのが気まずかっただけだ。
愛海が助手席に乗り込むと、車はかつて二人で訪れた森林公園に向けて出発した。
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