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「中学生だよ?仮に今付き合ったとしても別れる可能性の方が高いじゃないか」
初恋の人とゴールインする人間なんてなかなかいない。ましてやそれが中学生の時の恋人となんて、一体どれ程の確率か。
「それはどうだろうなぁ。一般論ではそうかもしれんが、何事も例外はあるだろう?」
父さんは自分の胸をトントンと叩いた。
「あぁ、まぁそれはね……」
僕は目を逸らした。
逸した視線の先には、縦長のクローゼットがあった。下側は三段の引き出しになっており、桐で出来ているらしい。
あの扉の中には、僕が逃げ続けた罪が詰まっている――。
だから、僕は未だにあのクローゼットを開けた事が無いし、中身をきちんと確認した事も無い。
「でも本当に違うから。小鳥遊……さんは救急車を呼んでくれた恩人だよ。たまたまいつもの辻で会っただけ」
「……そうかい、つまらんなぁ」
何となく気まずい雰囲気の中、父さんはゴクリとビールを飲んだ。
「まぁ、適当に頑張れよ。でも一つだけ約束しろよ」
長い銀の釘を刺す様な鋭い声。
ビールを飲んでいる人間とは思えない程、急に真剣な目をするものだから、僕も思わず手を止める。
「どうしても危ない橋を渡るなら、一人で抱え込もうとするなよ。命綱は常に着けておけ――」
***
白以外の色を見ると安心する。
久しぶりの自室のベッドに深く身体を預ける。
味気無い病室に閉じ込められていると、どうも脳が麻痺してくる。情報量が少ないと、人はストレスを感じると、以前見たテレビで言っていた。
確かにそうだ。僕はまさにそれを身を持って体験した。
明らかに隠し事をされているのに、何一つ情報が得られない。そのもどかしさはよく知っている。
小鳥遊の話でも、結局全てが白日の下に晒された訳では無い。
「はぁ……。明日から登校だけど、大丈夫かなぁ」
情けない呟きは天井に吸い込まれて消えた。
――ピリリッ、ピリリッ。
その時、冷たい機械音が鳴った。
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