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巾着に包んだ弁当箱を開けていると、左に座る小鳥遊からビニール袋が擦れる音がした。
「……コンビニなの?」
「そう。お母さんは正直料理下手だし、私自身も料理しないから。中学生だったら、皆そんなものだと思うけど」
僕と話しながら、小鳥遊は簡素なコンビニ袋からハムと卵の定番サンドウィッチを取り出して一口食べた。
「へぇ……。僕は好きなんだけどね」
「珍しいね。料理好きな男子中学生なんて。今日のそのお弁当も?」
手に付いたマヨネーズを舐めると、小鳥遊は僕に視線を合わせた。
「まぁね。僕の場合は父さんの弁当を作るから、ついでに自分のもね」
「……火、危なくないの?」
「僕の家はIHヒーターだから、ね」
今朝焼いた鮭の切り身を食べながら、小鳥遊と他愛無い話をする。
――嘘みたい、だな。
この町に天葬という血塗られた歴史があって、実際に多くの人が命を落としていて……。青すぎる空の下で穏やかなランチタイムを過ごしている事が奇跡の様に思えた。
「それで、話って?」
お互いにほぼ食べ終わるタイミングを見計らって、本題を切り出してみる。
小鳥遊はペットボトルのお茶を一口飲み、一呼吸置いてから話し始めた。
「夕霧町……天葬の事。どうやって還って来たの?」
――凛とした声が穏やかな空間を切り裂いた。
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