カラの話

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皇帝の長男、カラの異母兄ホルの母はホルを身ごもったとわかった時に妃として迎えられたが、皇族でも王族でも貴族でもない、皇帝、皇族の為のお伽衆の一人という身分であり、皇帝と皇后(つまりカラの母だ)の保護が無ければ他に妻として後宮に迎えられていた妃達、そしてその後ろだてらがホルの母の存在を許さなかっただろう。皇帝だけならまだしも皇后までホルの母を護った事で、妃達は表だってはなにもできなくなってしまったが、ホルが生まれるまではそれでもホルの母に聞かせる為の悪口雑言、誹謗中傷が絶えなかったと困った顔も美しいカラの母はため息まじりにカラに語った。 カラ、貴方のお兄様とそのお母様には敬意と愛をきちんともって、弟としてお兄様を助けるのよ 言われなくても。カラの母はいつもカラの兄とその母を気にかけ、カラにも二人を守ってと語っていたが、周囲がどうあれカラは兄のホルを世界で一番の兄だと信じていたので、もし自分で兄や兄の母を助けられる事があるのならなんでもするつもりでいた。 重ねて言うがカラの助けが必要なことがあれば、本当に、嘘でなく、神に、父に誓って(カラの国では皇帝とは国を治める為政者であると同時に神の声を聞き人々に伝える神の代理人、いわば人であって神でもある存在だった)、カラはなんでもしたかった。 ホルが生まれる前の後宮がどういう状況だったのか、カラには想像もつかない。ホルが生まれてからは嫌がらせは引いていったというが、それでもカラの母は過去を思っては心配していたのできっとよほど酷かったのだろうとは思う。だからカラは母の心配を杞憂だと流さずいつもうなずいていた。いつか兄をかっこよく(具体的にどうするのかまでは思い付いていない)助けて自慢の兄から自慢の弟だと思われたいという気持ちも多大にあったりしたせいだが。     
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