カラの話

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しかし、世の中そう都合良くはいかないもので。 いや、ホルやホルの母を思えば都合が良くない等と言ってはいけないのだが、ホルの母はともかくも、ホル本人はカラの助けを必要とするような儚い存在ではなかった。それどころか、常にホルはカラを護るべき弟として支えてくれている始末だ。 カラにとって、ホルはなによりも素晴らしい兄である。だがホルから見たカラはどうなのだろう?幼い頃は兄に見つめられ、その優しい瞳に写る自分が誇らしかった。けれど成長して兄と自分の差が顕著になればなるほど己が恥ずかしく、幼い頃は無邪気に見つめ返せていた兄の瞳を、今のカラは見ることができないでいた。 そもそも、ホルの母がホルの子を生んでから嫌がらせが引いたというのはなぜなのか。皇帝や皇后の直接の保護が火に油を注いでいたのかもしれないが、そのような輩が子が生まれた事で手を引くものだろうか。単純に言って、子が生まれるまでの攻撃のよすがが誰の子かわからない、その一点に頼りすぎていたのが一番の原因かもしれない。     
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