カラの話

5/12
前へ
/25ページ
次へ
悲しいかな、カラは神の子たる皇帝とその正妻の子であったが身長も体躯も才覚も平均以上を抜きん出る事は無い青年へと育ち、唯一抜きん出ているといえば美しいと讃えられた母と成人してなお瓜二つの容姿くらいだが、そこが似てどうするんだというのがカラとカラを取り巻く周囲の見解であった。 皇帝とは、為政者であり神の声を代弁する神の子である。よって神の声を聞く身に穢れは好まれず、体毛なども不潔の象徴と見なされ基本的には全身頭髪も余さず処理し、皇子達も本来は皇帝の子であり神官である為成人すれば同じように処理される。カラの兄も刈り上げた頭に全身を手入れされた見事な褐色の体が常に輝き、神もきっとホルを愛するだろうと皆に囁かれていた。しかしながらホルと同じ歳であり同じように成人しているはずのカラは、美しい髪を刈るのを皇帝に許されず、体毛こそ父や兄と同じように手を入れられているが、肩で切り揃えられた見事な髪とそれを引き立てる為にと髪飾りを装飾された姿は、カラを正妻の子であっても跡継ぎにする気が皇帝には無いのだとカラにも周囲にも思わせた。     
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加