カラの話

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誰よりも皇帝に相応しい、何を置いても絶対に守りたい兄の一番の障害が、自分だという現実に。 その日の朝は静かだった。雨期を迎え、連日やむことの無い雨が珍しく止み、晴れやかな空を見せ、羽根が水を吸って高く飛べない虫を狙って鳥達がカラの部屋から見える庭を低く飛んでいた。ぼんやりと外を眺めながらカラの身支度を整える女官達に身を任せ、金色の帯を緩く腰に巻いた足元まである白い衣装を着せられていたのだが、やがて部屋の外で騒々しい足音が微かに聞こえてきた。バタバタと駆け回る音ではない。武装した男達の足音だ。不穏な空気に怯える女官達を静かになだめ、カラは私室の最奥にある寝室から部屋の入り口を兼ねた応接室に足を向けた。そこにはいつも通りカラの執務を補佐し守る青年が立っていた。彼はそういえば兄が自分にとつけたのだったな、他人事のようにカラは思った。怯えていた女官達と違って青年はまるでいつもの事のように立っていた。カラが現れると恭しく一礼しそのタイミングがわかっていたかのように外から扉がノックされた。     
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