カラの話

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青年がカラを伺うように見るのが耐えがたく、カラは顔をそらしたがそれを了承ととったのか、元々許可など関係無かったのか、青年は静かに扉を開けて客人を迎え入れた。入ってきたのは案の定兄のホルとその腹心たる者達だ。ホルもカラと似たような金の帯に、袖が無く裾の長い白い衣装を身にまとい耳や首、手首に金の装飾を飾っていた。武装している者も数人いたが、あくまで軍人の礼装を逸脱しないものだった。 いくらなんでもこんな露骨な暗殺はしないか ちらりと兄たちに目を向けたあと、カラはうつむいた。暗殺では無いとなるとなんだろう。地位を剥奪されどこかの僻地に封じられるのだろうか。カラは兄こそが皇帝に相応しいと信じているが、カラを傀儡に国の実権を握りたい者もいる。単純に、どれだけ素晴らしい人間だろうとその生まれが認められず、カラこそが皇帝に相応しいと言う者もいる。カラなりに対処してはいるがおいそれと全てを退けられるものでもなく、カラの意思など関係なく、カラの知らぬところで勝手に組織だててホルと対抗しようとされた事もある。カラに罪状をつけようと思えばいくらでもつけられるだろう。 立ち尽くしたまま何を言うこともなくうつむくカラに、ホルが静かに歩み寄る気配がした。今ホルは自分をどう見ているのだろう。優しい兄だから、憐れな弟だと哀しい目をしているだろうか。そんな風に見られたく無かった。自分が兄を誇るように、兄にも誇らしい弟だと思われたかった。自分にとって自慢の兄であったように、自慢の弟になりたかった。     
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