1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
カラオケ店の隣室
隣の部屋は随分盛り上がってるなぁ。
忘年会の余興で知らない歌を歌うことになり、近所に一人用カラオケはないから、通常のカラオケ店へ練習に来た。
そこの隣室が、平日だというのに随分盛り上がっている。
乱入したいとかではないが、いったいどんな客がいるのか気になって、トイレに行く時ちょっとだけ中を覗いてみた。
部屋には誰もいなかった。
扉こそ閉まっているが、画面どころか室内灯の明かりさえついていない。そう、完全に空室状態なのだ。
確かにこちらの部屋だと思っていたが、盛り上がっていたのは逆側の部屋だったのだろうか。
そう思って反対の隣室を覗いてみたが、こちらの部屋も空室だ。いや、両隣だけでなく、そもそもこのフロアで客が入っているのは俺の部屋だけだ。
上の階か下の階の盛り上がりが聞こえてきていた? それにしては随分音が近かった気がするが…。
首を傾げつつ部屋に戻ると、その途端、また隣から大盛り上がりの気配が響いてきた。
大音量の曲、歌声、歓声、さらには手拍子などの音までする。間違いなく隣の部屋だ。でも慌てて室外に飛び出し、隣室を覗き込んでも、そこには誰もいない暗い部屋があるだけだ。
もはや練習などしてはいられず、俺は大慌てでカラオケ店を後にした。
そろそろ忘年会シーズンだから、カラオケ店で盛り上がることも多々あるけれど、見えない奴らが隣で盛り上がっているのを聞かされるのはごめんだよ。
カラオケ店の隣室…完
最初のコメントを投稿しよう!