遊園地に関する猫のバックアップ

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 僕には父が居なかった。おまけに一人っ子なものだから、幼い頃は大概母と二人だった。何処へ行くにも。  そんな感じで、遊園地も母と二人で行った。  僕が望んだ訳ではない。母がおそらく、そうしなくてはいけないと思ったのだろう。  母は何かの義務みたいに僕の手を引きながら園内をぼんやりと歩き、そして時々引き攣った様に優しく笑った。  僕も僕で楽しい事なんか一つも無かったけれど、何だか申し訳ないような気持ちになって、「楽しいね」などと言ってみたりした。  どの乗り物に乗るのが自分達にちょうど良いのか分からず、僕と母は一日中園内を彷徨った。  閉園間際、歩き疲れ、家に帰って夕飯を作る気力の無い母と軽食コーナーのカレーを食べた。申し訳程度に入った肉片が転がるカレールーと夕焼けの色がドロリと重なる。軽食コーナーの建物の屋根は錆て赤茶け、ご丁寧にも看板に「オレンジハウス」と書かれていた。  歩道橋へ続く階段に座り込み、そんなつまらない事を思い出していたところに、彼女が声をかけてきた。  「バックアップ取れるけど、どうする?」  バックアップ取れるの意味が僕にはさっぱり分からなかったし、彼女が何の課題に対して提案してきたのかは謎だったけれど、行くべき場所も特に無かった僕は、大人しく彼女に着いて行った。     
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