『愛』

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『愛』

 つくづく私の心には品性がない。  友人の紹介で知り合い、私に思いを伝えてくれたこの女性のことを、私は好きではなかった。とはいえ、死、夢、そして愛、これらは絶対的な人生のテーマであり、逃れることはできなかった。  女性というのはこんなにも、好きという気持ちを伝え、またそれを求めるものなのか。友人とは明らかに違う、これが恋人というものなのか。私たちが結婚したらという話をする彼女は、どんな未来を思い描いていたのだろうか。少なくとも私の思い描いていた未来は、父の書置きの先にあるようなものだったが。  もし彼女の気持ちに真摯に答えたなら、永遠という代償と引き換えに、私は愛というネタの本質を掴めたかもしれない。だが私は愛とその代償を天秤にかけた。ただ1つ、そんなことをする人間には愛の本質は理解できないだろう、ということだけは何となく分かった。 **** ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。 ****  私は『愛』を知らない。夢には現実とのギャップがある。愛を掴めなかったように、夢すら掴めないかもしれない。死んでも傑作を書けないかもしれない。  ああ、『ネタ』が欲しい。新鮮で衝撃的で感動的なネタが。一体どこにある。一体どこにあるんだ、傑作のネタは。傑作のネタは、一体どこにあるんだ!
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