『人生』

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『人生』

 病院の天井を見つめる。私は結局、何にもなれなかったようだ。せめてこの死をネタにしてみたいものだが……また不可能なことを考えている愚か者を自嘲する。  ネタなど無くとも傑作は書けたのかもしれない。どんなに書いても駄作ばかりだった私は、自分の実力と向き合うことから逃げ、ネタという逃げ道を見つけた。ネタさえあればと思うばかりで、やるべきことから目を背けていたのかもしれない。  結局のところ、人間はその瞬間しか生きることができない。そこでできることをするしかない。今にして思えば、ネタさえあればと考え、ネタを手に入れた未来のことばかり考えていた私は、その瞬間を生きていなかったような気がする。  このベッドの上で、この瞬間に私ができることはもうない。心はともかく、身体が動かない。こんな私が息をする意味はあるのだろうか。死を待つためか。死とはなんだ。生きる意味とはなんだ。
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