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生田さん
その方は生田さんといい、戦闘で足を負傷しアメリカ軍の捕虜となり、終戦後に日本に帰ることが出来たそうです。
私は最後の望みを抱いて、生田さんに会いに行くことにしました。住まいを捜し出し、玄関の引き戸を開け声を掛けます「ごめんください」。
間を置いて奥から男が姿を現します。男は右足の膝から下が無く、痩せこけた身体と生気の無い顔は幽霊のようでした。
「初めてお目にかかります。私は生田さんと同じ部隊におりました信田の母でございます。息子は生きて日本の地を踏むことは叶いませんでしたが、せめて戦地でどのような最後を迎えたのか。お話を伺いたくてやって参りました」と挨拶しました。
生田さんは、私の話を聞いても、立ったまま一言も発しません。それどころか、しばらくすると大粒の涙をこぼし始めました。私が「大丈夫ですか?」と声を掛けると、生田さんは袖で涙を拭い、座敷に上がるように言いました。
そして、当時を思い返すようにポツリポツリと語り始めました。
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