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部隊
息子と生田さんの所属していた部隊は、40人ばかりの小隊で、安井という少尉が隊長として指揮をとっていました。二人は同い歳ということもあり、入隊してすぐに仲良くなり田舎の話などをして盛り上がっていたそうです。戦闘経験の無い隊員達は緊張感に欠けていたのかもしれません。
隊長は士官学校を出てはいましたが、経験に乏しく、そんな自分の不安を悟られるのを恐れたのか威勢だけはよく、隊員をすぐに怒鳴りつけ意味も無く殴るような男でした。
それは、まだ本格的な戦闘が始まる前のことでした。アメリカ軍が約20キロ先にまで迫っているとの情報が入り、隊長は生田さんと息子に偵察任務を命じました。二人は慣れない山道を歩きアメリカ軍に近づいったのですが、その途中で息子が足を滑らせ谷に転落してしまったのです。
生田さんは息子を助けようと谷へ降りていこうとしましたが、あまりの急斜面にそれは困難に思われました。途方に暮れた生田さんは、暗くなる前に部隊に戻り明日捜索隊を出してもらおうと考え、部隊に引き返すことにしました。
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