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敗北
生田さんは、撃たれた足に包帯を巻いただけの処置で壕の中に横たわっていました。
翌朝、隊長が隊員達を集め言いました「これより我が隊はアメリカ軍の侵攻阻止のため総攻撃に打って出る。これは先方隊の弔い合戦でもある。日本軍の底力を敵に思い知らせてやろうではないか」
その時です。突如、機関銃の音が鳴り響きます。アメリカ軍の奇襲でした。皆が慌てて銃を取り応戦しますが、次々と銃弾に倒れていきます。生田さんは外から聞こえてくる音でおおよその状況がわかりましたが、立ち上がることも出来ない身体ではどうしようもありません。
そのまま覚悟を決め寝転がっていると、隊長が壕に飛び込んできました。そして軍服を脱ぐと、自ら銃で太もも辺りを撃ち、生田さんの横に寝転がったのです。生田さんにはその時の隊長の行動の意味がわかりませんでした。
外の銃声が収まり、それは部隊の敗北を教えてくれます。間もなくアメリカ兵達が壕の中に入ってきて、隊長と生田さんをみつけました。
二人は壕の外へ引きずり出されました。先ほどまで生きていた戦友達が無残な姿で転がっています。手足のちぎれた者。内臓が飛び出ている者。顔の半分が吹き飛び脳みそが出ている者。生田さんはその光景にショックを受け気を失ってしまいました。
気が付いた時、生田さんをアメリカの軍医が診ていました。その後、腐り始めた足は膝から下を切断することになったのですが、命だけは助かりました。
そしてアメリカ軍の捕虜となって終戦を迎え、半年後母国へ帰ることができたのです。
壕から引きずり出された後の、隊長の消息はわかりませんでしたが、アメリカ軍の捕虜への対処を知って、あの時の隊長の不可解な行動の意味が理解できました。
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