急「天文博士」

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■■■  書類を整理し終え、デスクの引き出しにしまった所で、幸隆(ゆきたか)はため息をついた。  彼が作業しているのは事務室。陰陽生(おんみょうせい)にとっては学校の役割を持っているこの施設からすれば、職員室と言う方がしっくりくる。  時刻は夜の二十二時半を回ろうとしている。こんな時間まで残って業務を行っているのは自分くらいのもので、それというのも別に幸隆(ゆきたか)だって好き好んで残業したいという訳ではない。  大儺儀(だいなのぎ)の状況を聞いてから残っていた書類作成は(ろく)に手につかなかった。PCの画面を見れば、未読のメールが溜まっている。これを明日消化しなくてはならないのかと思うと気が滅入る。だが、そんな呑気な事を考えていられる状況ではないのかもしれない。果たして、いつも通りの明日は果たしてやって来るか。今も戦場で戦っているはずの陰陽師がもしも敗北してしまったら、自分を含め、日本は一体どうなってしまうのだろう。大儺儀(だいなのぎ)は、五名の『儺人(なびと)』によって行われる。しかし、力及ばずとも、やはり先の知らせを聞いた時、加勢に向かうべきだったのではとも思う。  PCの電源を落とし、自分のデスクに鍵をかけ、鞄を以て事務室を後にする。オートロックの出口を出ると、廊下は既に明かりが落とされていた。外観は歴史ある建築に見えるものだから、怪談話に最適な不気味な雰囲気を醸し出してくるが、わざわざ幽霊も自らの天敵となる人間たちの本拠地に化けて出たりはしないだろう。 「?」  なんだ、と幸隆(ゆきたか)は眉を(ひそ)めた。廊下の突き当りの部屋に明かりが灯っている。この時間だと館内に残っている人も警備員以外はほとんどいないはずだが。廊下の奥にある部屋は応接室だ。ゆっくりと廊下を進み、様子を確認する。四回ノックし、ドアを開け放つ。 「失礼します。って、陰陽頭(おんみょうのかみ)!?」 「おぅ、幸隆(ゆきたか)君か」  
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