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あたしは大きく溜息をつくと、窓を見上げた。
『それじゃあ、外に出よう。このまま天国に行くのも悪くないけど、ちょっと行きたいところがあるんだ』
言えば、天使はにっと笑い、あたしの手を取った。
『やっぱりね。言うと思った』
『は?』
引っ張られるようにして、あたしは病院の外へ連れ出された。
『この前会った時、言ってたじゃない。元気になったらデートしたいって』
…………。そういえば、カウンセリングに来たと言われ、彼を研修医だと思ったあたしは、質問されるまま、いろいろなことを彼に話したんだっけ。
[退院したらやりたいこと]
歩くのも困難になっていた自分の身体。退院はもう無理だと気づいていた。研修医はなんてふざけた質問をするんだろうと思ったけれど、生きる希望を与えているんだと思考を前向きにして、あたしは長年の妄想を口にした。
ふわふわと浮かぶ彼の背中には、いつの間にか翼が出ていた。しがみつけば、翼を羽ばたかせ、天使は空を飛び始めた。
『……あたし、こう言わなかったっけ? かっこいい男子とデートしたいって』
『ボクじゃ不満? 見かけは悪くないと思うんだけど?』
『悪くないけど、想像と違う。あたしは自分と同じくらいの男子を考えてた。あんたは学校の先生みたいで、なんかイヤ』
言ってあたしは、天使を突き飛ばし、落下するための足場にした。
『うわあああっっ』
彼の声が離れていく。追いかけてこない=あたしの望みを聞いた、ということで、あたしはまだ天界へは行かなくてもいいのだろう。
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