初デートの相手はまさかの幽霊

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五樹(いつき)。今日、暇?」  日曜の朝、母さんに言われた。トーストを齧っていた俺は、パンを飲み込んだ後、答える。 「うん。特に何もないけど。なに?」 「サーカスへ行かない?」 「は? サーカス?」 「ショッピングセンター跡地で、今、やってるの。お父さんと行くつもりでチケットを取ったんだけど、急に行けなくなっちゃって。だからね、代わりに、一緒に行ってほしいの」 「……サーカスかぁ……」  見たことがないから、ピエロが玉乗りをするイメージしか自分にはない。  う~んと唸ったものの、暇だし、こういう機会がないと見に行きそうもないから、俺は母さんの誘いに乗ることにした。  …………で。  バスに乗り、ショッピングセンター跡地のイベントスペースにできた仮設テントの前にやって来た。  開場までの間、母さんの日傘を手にして(母さん曰く、傘を持つのは背の高い男子の義務、らしい)行列に並ぶ。念のために言っておくが、母親と相合傘にはなりたくないから、俺の身体はほとんど傘の陰に入っていない。  ふと、視線を感じた。気配の先を見れば、グッズを売るテントの横に真っ白い女の子が立っていて、なぜか俺をじっと見つめていた。
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