2人が本棚に入れています
本棚に追加
「五樹。今日、暇?」
日曜の朝、母さんに言われた。トーストを齧っていた俺は、パンを飲み込んだ後、答える。
「うん。特に何もないけど。なに?」
「サーカスへ行かない?」
「は? サーカス?」
「ショッピングセンター跡地で、今、やってるの。お父さんと行くつもりでチケットを取ったんだけど、急に行けなくなっちゃって。だからね、代わりに、一緒に行ってほしいの」
「……サーカスかぁ……」
見たことがないから、ピエロが玉乗りをするイメージしか自分にはない。
う~んと唸ったものの、暇だし、こういう機会がないと見に行きそうもないから、俺は母さんの誘いに乗ることにした。
…………で。
バスに乗り、ショッピングセンター跡地のイベントスペースにできた仮設テントの前にやって来た。
開場までの間、母さんの日傘を手にして(母さん曰く、傘を持つのは背の高い男子の義務、らしい)行列に並ぶ。念のために言っておくが、母親と相合傘にはなりたくないから、俺の身体はほとんど傘の陰に入っていない。
ふと、視線を感じた。気配の先を見れば、グッズを売るテントの横に真っ白い女の子が立っていて、なぜか俺をじっと見つめていた。
最初のコメントを投稿しよう!