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公園内では、白、桃、紫の紫陽花が満開になっていた。
降りだした雨が密やかに花弁を濡らす。
ふと前を見ると、たわわな花をつけた赤紫色の紫陽花が、歩道を占領している。
傘を差したままでは二人並んで歩けない。
「傘、一本にしましょう。僕が差します。」
「いいよ。先に行って。」
「二人で一本です。ほら。」
そう言って、私の傘を取り上げ畳んでしまった。
「濡れるから、もっとこっちへ。」
彼は私の腕を取り、二人で一本の傘に納まった。
いつもリードする側だった自分が、彼のペースに引き込まれ、ものも言えずに立ち竦んでいると、傘のない空いた手で、私の背中を包んできた。
その頃の彼は6年越の同級生との恋を実らせ、結婚したばかりだった。
結婚式に参列した私は
「ふうん。こんな女が好きなんだ。」
切れ長の目をした美しい花嫁と腕を組み、二人は雛壇に向かって歩いていく。
一度でいいから、その腕に抱かれてみたい・・
忘れていた感覚が湧いてくる。
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