朝、起きたら

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 こういう時、一人暮らしと言うのは厄介だ。同居人がいたなら、迷わず救急車を要請してくれるのだろうが、一人だとそうは行かない。  孤独死とは、こういうサイクルで起こるのか。  ……って絶対嫌! さすがに死にたくないです!  と言うことで、助かる為に状況を整理してみた。頭は混乱気味で、一から立て直すのも正直いっぱいいっぱいだけど。  えー、まず、朝起きたら体が動かなくなってた。  体勢は多分、夜中こうなってそのまま。  痛みも辛さもなくて、異常は動かないことのみ。  あと、声は出る。これは大いに助かる。  これなら、救急車が呼べ――なかったわ。  生憎、スマホは頭の後ろだ。昨日置いた場所から動いていなければ、顔の真反対にある事になる。  いや、真ん前にあったとしても意味無いけどな。  じゃあ、誰かの助けを待つか?    例えば家族とか?  助けてもらうなら、親しい人が好ましいだろう。  しかし、不運な事に、そのポジションの家族が今は他県の人間だ。  現段階では、一番希望のないポジションにある。  じゃあ、友だち?  大学を無言で欠席すれば、誰か一人くらいは……って言っても、単位取得制だし一日行かなくても違和感ないんだよな。  昨日、『また明日ー』とか友だちっぽいこと言っておけば良かった。そういや、今までそういう挨拶したことないや。 あれ、俺って陰キャ?  と言うのは良いとして、あと他に助けてくれそうな人は――。  ポンと、脳裏に彼女の顔が浮かんだ。大学で知り合って、意気投合して付き合い始めた彼女だ。  容姿端麗な上に性格も良くて、他の奴らから羨ましがられるほど素敵な彼女である。  そんな彼女なら、毎日のように連絡を取り合ってるし気付いてくれるのでは?  ――と一瞬希望を抱いたが、致命的な点に気付いた。  彼女と連絡を取り合うのは、いつも夜だ。  いわゆる、気付くとしても夜か翌日になるだろう。  ……夜まで待つか? この状態で?  いや、それは無理。体以前に心が死ぬ。  ――となると、残された手段はたった一つ。  しかし、それが途轍もない難関なのだ。  残る手段。それは〝自ら助けを呼ぶこと〟だった。
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