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イケメン宇宙人は、感情を抑えているような様子で腕を組んだ。
俺は適量を示した線まで一ミリの狂いもなく注ぐと、蓋を閉めた。
「三分待つ」
容器を両手で持ち言った。
「三分 ! ? 」
イケメン宇宙人は、整った顔を歪めた。
「三分だと? そんなに待つことに、何の意味があるんだ!」
声を荒らげる。
「ここは安アパートなんだ! 大声を出すのは、やめて貰おう!」
俺は毅然とした態度で言った。
「俺にも立場がある。新卒で就職したばかりの身なんだ。ここを追い出されたら、カップ麺どころではなくなる」
イケメン宇宙人は、格好良く目を眇めた。
「君だって、調査が続けられなくなるぞ」
イケメン宇宙人は、息を吐き声のトーンを落とした。
「生物なら、すぐにでも腹を満たしたいものではないのか。三分も待てるものなのか」
「五分のものもある」
俺は正座して答えた。
「……何だと?」
「何もおかしなことではない」
俺は不敵に笑ってみせた。
「程よい時間待つことは、食欲の増進に繋がる。胃酸の適度な分泌を促し、消化をスムーズにする」
持論だが、俺は自信を持って言った。
「……一分ではいかんのか」
イケメン宇宙人は言った。
「昔、一分のカップ麺が販売された時代があった」
俺は親から聞いた話を静かに語った。
「だが人々は、その一分のカップ麺を、ついつい三分待ってしまった」
「何だと ! ? 」
「カップ麺が伸びて美味しくないという事例が多発し、とうとうそのカップ麺は、地球上から排除された」
「む……」
「三分というのが、どうやら人類の体内時計のリズムに一番ぴったりの時間らしいのだ」
「……なるほど」
二分十秒……二分二十秒。
俺は、瞑想をする武人の如く、静かにアナログ時計を凝視し続けた。
イケメン宇宙人が、俺に銃を突きつけたままじっと睨み付ける。
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