カップ麺ミニッツ

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 緊張のあまり僅かに目線を上げる。  イケメン宇宙人と目が合い、更なる緊張が走った。  俺は、ごくりと唾を飲んだ。  二分三十秒。  激しい電子音が静寂を割った。  イケメン宇宙人が、携帯に向けて銃を向ける。 「待て! 電話だ!」  イケメン宇宙人は、引き金を引きかけた指をかろうじて止めた。 「出るが、いいか」  俺は携帯を手に取り、イケメン宇宙人の様子を伺いながら通話状態にした。  彼女からだった。  「ケーキ食べに行かない?」と明るく言われた。 「え、今、ごめん、ちょっと」  俺は、曖昧に言った。  口の中でカップ麺とケーキの味が混じり合ったように錯覚して少々気持ち悪い。 「貴様、やはり何か企んでいたな! 外部への応援要請か!」  イケメン宇宙人は、携帯に銃口を向けた。  俺ごと撃ち抜くつもりか。 「違う! 彼女は何も知らない!」  俺は叫んだ。  「誰か来てたの?」と彼女が電話口で言った。 「本当だ。彼女は、カップ麺のことは俺ほど詳しくはない。きちんと自炊するいい子なんだ」  俺は言った。 「信じてくれ」  イケメン宇宙人は、俺から携帯を引ったくると、乱暴な口調で言った。 「おい女、今こちらは大事なところなのだ。我々の邪魔はしないで貰おう」  俺は、イケメン宇宙人から慌てて携帯を取り返した。 「ちょっ、ごめん、今ちょっと」  彼女は「やだぁ」と声を上げた。  何か、びぃえるびぃえる言ってはしゃいでる。  変なツボに嵌まったな。  俺は、携帯を切った。 「やっと出来た彼女なんです。やめて貰えますか」 「ほお。口調が変わったな」  イケメン宇宙人は、口の端を上げた。 「それがお前の弱点か」 「卑怯者め」  俺は歯噛みした。 「女を巻き込みたくないという優しさが、やがてお前の命取りになるぞ」  三分。  俺は、アナログ時計を横目で見た。  
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