日常

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パソコンを開けば、世界中のあらゆる情報を得る事ができる。そして、SNSといったサービスの広まりによって、人は顔を合わせなくても交流が出来る術を得た。それでも、人と人が出会い、五感を以て何かを得るのは今の社会でも必要なのは変わりない。また、俺はそれこそが生き物が生きていく上で必要な行動として最適であるのを、本能が知っていた。 一方、顔を合わせない交流が増えた事でよくつぶやかれる事。俗にいう「愚痴」には、「毎日が退屈だ」・「つまらない」。ましてや、「何か起きてくれないか」とまで呟く人間も少なからずいるだろう。しかし、俺は思う。「何も起こらない。普通である事」が、どれだけ幸せで恵まれている事なのか。平穏な毎日を送る彼らには、その実感を理解する事もできないのだろうと――――― 「おはよう、慎太!」 「おお…暖乃か…」 朝、キャンパスでの登校時に、友人であり恋人でもある大和田暖乃が、後ろから声をかけてくる。 気配を感じ取れなかった俺は瞬時に振り向いたため、彼女は少し驚いたような仕草を見せた。“本来なら”この事に対して悔やむのが当たり前だが、今の俺にとっての優先順位が一番高いのは、暖乃だ。そのため、気配を感じ取れなかった事に関しては、とりあえず横に置いておく事にした。 「あーもう!一限目から英語だなんて、面倒だよねー!」 「はは…。まぁ、この北海道の地に西洋人の語学ってのも、何だか複雑だけど…法則覚えてしまえば、簡単っしょ!」 「むー…。慎太はどの科目も不得意がなさそうだからそう言えるんだろうけど、英語が苦手な私としては、簡単ではないの!」 俺の言葉に頬を膨らませながら、彼女は言う。
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