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「…っ…!!」
追い打ちをかけるようなクレスタの言葉に、思わず唇を噛みしめる。
「…そろそろ、次の授業が始まる頃だ…。俺は行く…」
俺は逃げるようにして、その場から立ち去る。
『とりあえず、今すぐにとは言わない…。だが、近い内にあの娘とは別れた方が、互いのためだぞ…』
食堂を出ていく際、次第に小さくなっていく同胞の声は、俺の心に深く突き刺さった。
「そっか、風邪…か。悪いな、吉田」
『ううん、大丈夫だよ!ただ…』
「ただ…?」
数日後、俺は携帯電話で電話をしながら、街中を歩いていた。
電話の相手は暖乃の親友であり、バイト先が同じの吉田みち子という女子大生だ。吉田の彼氏が俺と面識がある事から、仲良くなった相手だ。しかし、彼女やその彼氏は、俺が狼の血を引く人間だという事は知らない。
『あの子、体調悪い時はいろいろとふさぎ込んだりするから…轟木君。よろしくね』
「…ああ」
少し意味深な言葉を口にした吉田に対し、首を縦に頷いた俺は、通話を終了させた。
携帯電話をGパンのポケットに押し込んだ俺は、歩くスピードをあげて、そのまま走り出す。
人狼は運動能力が高くて寒さに強いという特性があるが、人の姿をしている際は肌や体感温度は人間と同じ。また、12月上旬という寒さだから当然、手袋をしていない指は冷えてしまう。白い息を出して指を冷やしながらも、俺は急ぐ。「すぐ会いに行って、お前を安心させたい」と強く想う俺にとって、北国・北海道の寒さは大した問題ではないのであった。
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