来年、また初雪の日に ーEpilogueー

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そんな時間ももちろん、長く続くわけではない。 彼はしばらく帰国しているだけで、また行かなくてはならないから…。 「…また、雪…。」 今年は雪が降る日が多いなぁと思いつつ、凍えそうな空気の中、ベランダに立って吐いた息を眺めていた。 今日、あなたは旅立つんだね…。 だからまた一つ、私は失うんだ。 空港で暗い顔の私に、彼は笑いながら、言った。 「また来年、帰ってくるよ。」 「…うん。そうなんだよね…。」 分かってるけど。 七夕の彦星と織姫みたいに、今、自分達は引き離されているようで。 待っている時間は、長くて、切なくて。 でも、会う時間は、それ以上にないくらい、幸せに満ち溢れているよね。 「季節外れの、彦星と織姫みたい…。」 「そう?」 私の子供っぽい考えに、彼は可笑しそうに笑うと、荷物をもう一度持ち直した。 「じゃあ、ユキ子…。」 「…。」 「また、来年の、初雪の降る日に。必ず、会いに行くよ。」 「…うん!その時は、また、ショパンの曲、聞かせて。」 彼の嬉しそうな顔で手を振る姿がだんだんぼやけて、見えなくなっていく…。 その後、彼を乗せた飛行機を見つめる私の息は、 やっぱり白く濁っていたけれど、悲しそうには消えずに、空高く、天高く上がって、 幸せそうに、ゆっくり消えた…。 雪の降る、ある冬の事。 短く、儚かった今年の物語だ…
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