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【モンタージュ】
始まってしまった。
『今日』という憂鬱が、また。
通勤の往路。
地下鉄の車両の中。
息を吸うことさえ苦しいほどの、ぎゅうぎゅうの満員。
額を首筋を、ぬるぬるの汗が伝い落ちる。
じっとりとした湿度で、ブラウスの布地は背中に貼り付いたまま。
いや。
もう、いや。
だけど、有りはしないの。
どこにも、逃げる先なんて。
堅牢な護送車みたいな、この箱の中と同じ。
せめて、私は、視線を車窓の外側へと。
スクロールする街並の、その一点?
『川』
との文字?
『川田クリニック』との看板の、その一文字だけが、瞼の裏に焼きつくように?
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