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「いえ、この間、同期何人かで初めて来たんです。美味しかったから、原田さんも気に入ってくれるんじゃないかと思って……」
喜多見さんは、照れたように目を伏せて笑った。
ふふっ
かわいい……
その時、私は、不覚にも年上の喜多見さんをそんな風に思ってしまった。
気を良くした私は、美味しいお料理に舌鼓をうち、美味しいお酒をしこたま呑んで、喜多見さんに失恋の愚痴を吐き出した。
「もう、私にはついていけないんだって。そりゃあ、ちょっとは、わがままも言ったかもしれないけど、私だって、あの人のドタキャンとか許してあげてたのに……」
喜多見さんは、何も言わず、うん、うん…と聞いてくれた。
そして、最後に、
「原田さん、明日の土曜日は空いてますか?
ひとりでいるのは辛いでしょうから、どこかへ出かけませんか?」
と誘ってくれた。
あの時は気づかなかったけど、今思えば、あの時、彼は、思いっきり緊張していたように思う。
そうよね。
人見知りの彼にしてみれば、一世一代の勇気を振り絞った言葉よね。
そんな彼の言葉に、私は、酔った勢いで、深く考えることもなく、
「うん、行こう! 行こう!」
と答えて、あっさり翌日のデートが決まった。
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