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そこから、私たちの関係は始まった。
週に数回、食事に行き、毎週末、デートに行った。
喜多見さんは、ルックス的には、決して好みのタイプではなかったけど、穏やかな彼の性格は一緒にいてとても居心地が良かった。
失恋直後の傷ついた心を、あたたかく包んでくれて、優しく癒してくれる。
おしゃべりな私の話を、いつも「うん、うん」と、ちゃんと聞いてくれる。
それでいて、時折、ぼそっと挟むツッコミは、とてもおもしろくて、私は一人で大笑いしてしまう。
彼は、そんな私を見て、照れ臭そうに笑いを噛み殺している。
そうしているうちに、1ヶ月後には、私の失恋の噂はどこからともなく広がり、何人かの男性から声を掛けられるようになった。
だけど、私は全て断った。
正直、喜多見さんよりカッコいいひとは何人かいた。
気持ちが全く揺れなかった訳じゃない。
でも、喜多見さんより優しくて、喜多見さんより居心地のいい人はいなかった。
多分、この頃から私は、彼に惹かれていたんだと思う。
でも、私だけじゃない。
絶対、彼も私に惹かれていたはずだと思う。
だけど、彼は何も言ってはくれなかった。
元来、内気で大人しい彼だもん。
告白なんて事は、苦手なんだと思う。
だったら、私からなんとかしなきゃ!
3ヶ月が過ぎたところで、私は行動に出た。
『喜多見さん、いつも優しいよね。なんで?』
そんなメールを送った。
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