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不妊
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不 妊
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私は、子供の頃から、子だくさんの肝っ玉母さんになるのが夢だった。
だけど、結婚して2年経っても、子供ができない。
27歳の時、私たちは産婦人科の不妊外来を訪れた。
検査の結果、純ちゃんの精子の数が少ないと言われた。
煙草も吸わない。
お酒も月に1~2回、付き合いがある時だけ。
家では晩酌もしない。
ギャンブルもせず、堅実に働く。
女にもモテないから、浮気もしない。
理想の旦那様だと思ってたのに、そんな落とし穴があるなんて……
それから、私たちは、産婦人科に通うようになった。
けれど、不妊治療は、そんなに簡単なものじゃない。
人工授精から、体外受精、顕微受精へと進んでいく。
月に何度も病院へ通い、何本も注射を打ち、全身麻酔で採卵をし、それでも、期待するような受精卵は、毎回1〜2個しかできない。
その1個を体内に戻して、着床を待つ。
今度こそ。
今度こそ。
毎回、そう思って、お腹にいるかもしれない赤ちゃんのために、出来るだけ静かに過ごす。
けれど、神様は無情で、そんな私の望みを、あっさりと打ち砕く。
下着に付いた赤い染み、ただそれだけで。
私は、子供が欲しくて、欲しくて、生理が来るたびに、純ちゃんに隠れて泣いた。
純ちゃんのせいじゃない。
だけど、純ちゃんの前で泣いたら、彼はきっと自分を責める。
両親にも言えない。
私が泣くのを見たら、純ちゃんのせいだと思うかもしれない。
だから、私は誰にも言えずに、ひとりで毎月泣いた。
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