第1話2

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夕方、父さんが帰って来た。首に巻いたタオルで汗を拭きながら 「ただいま」 「お帰りなさい、お風呂から入る」 「そうだな、ほいっ」 父さんが言うと同時に僕の目の前に(たこ焼き)の袋を出した。 「えっ」 「あら~明人良いわねぇ、父さんがお土産だってよ」 6年、生きてきて初めてだった・・・嫌っ、前にも有ったような気がしたけど? 夢で見たのか?何だったのか?ハッキリと思い出せなかった、一瞬父さんを見上げて笑顔で返したかった。 でも、そんな事で父さんを許したりはしたくなかった。 僕は父さんを無視して見てたテレビを消して隣の部屋へ行き襖を閉めた。 「明人」 母さんの呼ぶ声が聞こえたけど僕は振り向かなかった。 閉めた襖の隙間から父さんを見た。何か寂しそうだった。 自分が買って来た(たこ焼き)の袋の中身ををテーブルに置くと淋しそうに母さんを見た。 母さんは、そんな父さんに微笑んでいた。 「大丈夫よ、朝あんな事言ったんで一寸恥ずかしがってるだけ、(父さんが帰ったら謝りたい)って言ってたのよ」 (僕は、そんな事言ってない、母さんが謝りなさいって言ったから(うん)って返事しただけだ) 母さんは優しいから苛める父さんにも優しいんだ。父さんは、そんな母さんを苛めるなんて、絶対僕は許さない。 お風呂から上がった父さんは土産の(たこ焼き)を摘まみに又飲み始めた。 明人の場合・5へ続く?
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