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父さんのおっきな背中で母さんが見えなかった。
急いでティッシュの箱を掴むと僕は母さんの所に走った。
「父さんなんか、どけっ」
僕は思いっきり体当たりした。父さんは酔っていたのも有ってよろっと今度は後ろに尻餅を着いた。
母さんの傷は余り深くは無かったみたいで血はもう止まってるみたいだった。
それでも僕は許さない!父さんなんか出て行けば良いんだ!
僕は父さんを睨んだ。父さんは何かオドオドして僕の目をそらした。
「母さん大丈夫?うっ!うっ!」
何故か僕は母さんの顔を見ると涙が溢れ出してきた。
(泣かないぞ、泣くもんか)
思うのだけど涙が勝手に溢れて止まらなかった。
「だ・大丈夫よ明人、ほらっ何ともないわ」
「でも、でも、血が出てる、父さんが悪い、父さんなんか、」
「違うのよ、母さんが一寸つまずいたの(笑)父さんは悪くないのよ」
(ヤッパリ母さんは優しい、どんな酷い目に有っても父さんを悪く言わない、なのに、父さんは、父さんは)
僕の体がプルプルと震えてた。悲しいからではなく、父さんへの、いや、この男への怒りで震えてたんだ。
僕が母さんを守るんだ、この男から僕が母さんを守るんだ。
その言葉だけが明人の頭の中でグルグル回ってた。
あの日、父さんは何時ものように仕事から帰ると、ご飯を食べお風呂に入って又何時ものようにお酒を飲み出した。
僕が「ごちそうさま」を言うと母さんが僕を見て優しく笑った。
うん、母さんの笑顔は僕1番好きだよ。大好きさ。
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