序章ー世界は何の為にあるー

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グレイという少年。 傲慢たるだけの能力を持っているのかと【魔王】は思考する。 『一応聞いておこう。グレイ、お前の能力は何だ?』 『能力なんざ生まれてこの方持った試しがねぇよ。今時珍しい、"持たざる者"ってやつだ』 【魔王】は驚いた。 神の力を持つとも呼ばれる転生者を殺すと宣うこの少年は、何一つ"持っていない"と笑って見せたのだ。 【魔王】は一際大きく笑う。 面白い。 面白いじゃないか。 1000年余り待たされて、ついぞ現れた者は想像を遥かに下回る弱さで、想像を遥かに超越した『傲慢』を所持している。 なればこそ、と【魔王】は嗤う。 『残念だが、我が与える与えないに関わらず、お前がここに来た時点で我にあった能力はお前のモノで、既に備わっている』 『なに?』 『能力は既に備わっている』と言われ、体の違和感を探すが見つからない。 能力、所謂スキルと呼ばれる代物は、恩恵を与えられた者には使用用途等の詳細が解るという。 しかしながら、グレイはそれを会得した経験が皆無だ。 グレイの悩む所作を察した【魔王】はカラカラと笑う。 『お前の内にあるそれはスキルではない。加えてまだ発動をしておらん』 『どういう事だ?』 『教えてやるから慌てるな。先ず第一に、お前が懸念している我から与えられたという表現だが、我が与えたモノではなくお前が勝ち取ったモノで、本来備わるべきモノだ』 『後天的な能力の取得は聞いたことがあるが、それは元々略奪系のスキルを保持している奴の話だ』 『それとはまた別の"遺伝"による継承だ』 『"遺伝"?』 『我の血縁者であり、且つ一定の意思の強さを持つ者のみがここに来る事ができる』 『血縁者』と聞いて、グレイは得心のいかない表情をした。
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