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『そろそろ時間だな』
【魔王】が呟く。
『大サービスだ。最近になって位置が把握できた能力の近くに転位させてやる』
『もう終わりか?』
『伝えるべき事は伝えた。これ以上何を話す?身の上話でもするか?』
【魔王】の返しにグレイは小さく笑う。
『それもそうだな』
『お前が能力を集めていけば、また会う事もあるだろう。ではな、グレイ』
グレイの体が一際輝いたかと思うと、次にはそこから消えていた。
【魔王】はフフと笑う。
一つは待ちに待って漸く訪れた【魔王】から"直接"能力を継承する来訪者。
もう一つは《傲慢》を全て捧げたにも関わらず、【魔王】に対しての"態度"が変わらなかったグレイの底知れぬ傲慢さ。
(『概念の破壊者』か。漸く、漸くだな、、、)
少年は思う、転生者とは"世界に不必要な存在である"と。
過去にて大戦を制した英雄、【魔王】を滅した勇者、世界を恐怖に貶めた狂王、最強の名を欲しいままにした英傑。
そのどれもが転生者か、それに付随する何かであった可能性が高い。
それは、勇者などと呼ばれる者達の出自に不明な点が多いからである。
少年は思う、世界は何の為にあるのか。
もしも、もしもだ。
世界に転生者がいなかったとして、果たして【魔王】は世界征服を成していたであろうか。
断じて否である。
何故ならば、世界に住まう人間が、人間以外の他種族が、魔物以外の動物たちが、それを許さないからである。
圧倒的な力があるから何だ。
力の前に"持たざる者"は弱者である。
しかし、弱者には相応の戦い方があるのだ。
少年は想う、世界はーー
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