第3章ー世界は今日、変えられるー

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その場の全員が自身の目を疑っていた。 ラティアスの私兵は何人か残り、ラティアスの居る大きなテントの外で護衛をしていた。 それでも、相当数の冒険者が押し寄せれば必然、抵抗もなく制圧する事が出来た。 しかし、私兵も冒険者達でさえ、その無惨な惨状に気づきもしなかったのである。 テントに足を踏み入れ、先ず目に入ってきたのは夥しい程に飛散した鮮血の海。 海の中央に乱暴に積まれた人間だったとは考えにくい肉塊。 辛うじてそうだと分かる腕や足は捻れた姿で肉塊に埋もれ、剥き出しの臓物がそれらを包むように覆い被さっている。 血生臭い悪臭がテント内に充満しており、最初に入った冒険者は惨状とその悪臭に叫ぶより早く嘔吐した。 次の冒険者が入って直ぐに叫びをあげ、後続からレオナルドが慌てて踏みいったのである。 レオナルドは惨状を目にして素早く耐性の低い者を外に出した。 そうして自分の鼻を袖口で隠し、ゆっくりと前に進む。 それがラティアスだったモノだと分かったのは、肉塊の真上に無造作に置かれた、首が捻れた頭部があったからだ。 恐怖に歪んだ表情のまま、目を開ききって絶命している。 レオナルドは怒りや悲しみよりも先に、無念さを感じた。 誰もが目を疑い、レオナルドの後ろで固唾を呑んで立ち止まっている。 「何と酷い、、、」 レオナルドが呟いた。 「ラティアス殿、あなたが築き上げたモノを捨ててでも尽くした相手は、蜥蜴の尻尾のようにあなたを切り捨てた」 血溜まりなど気にもせず、両膝を地面に落とす。 「これがあなたの信じた正義か!」 右の拳を地面に打ち付け、血が周囲に飛び散った。 自分達の長の哀しみに暮れた背に、誰もが何も言えなかった。 力なく立ち上がるが、僅か振り返って「てめぇら」と怒気を孕んだ声色で言う。 そこの誰もがその言葉に直立した。 「ワシは奴等を絶対に許さん。近い内必ず根絶やしにしてくれる。着いてきてくれるか?」 誰かが合わせた訳でもなく、視線でタイミングを見た訳でもない。 だが、レオナルドの言葉に、その場の全員が一斉に「はっ!!」と当然の如く肯定の言葉を返した。
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