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その場の全員が自身の目を疑っていた。
ラティアスの私兵は何人か残り、ラティアスの居る大きなテントの外で護衛をしていた。
それでも、相当数の冒険者が押し寄せれば必然、抵抗もなく制圧する事が出来た。
しかし、私兵も冒険者達でさえ、その無惨な惨状に気づきもしなかったのである。
テントに足を踏み入れ、先ず目に入ってきたのは夥しい程に飛散した鮮血の海。
海の中央に乱暴に積まれた人間だったとは考えにくい肉塊。
辛うじてそうだと分かる腕や足は捻れた姿で肉塊に埋もれ、剥き出しの臓物がそれらを包むように覆い被さっている。
血生臭い悪臭がテント内に充満しており、最初に入った冒険者は惨状とその悪臭に叫ぶより早く嘔吐した。
次の冒険者が入って直ぐに叫びをあげ、後続からレオナルドが慌てて踏みいったのである。
レオナルドは惨状を目にして素早く耐性の低い者を外に出した。
そうして自分の鼻を袖口で隠し、ゆっくりと前に進む。
それがラティアスだったモノだと分かったのは、肉塊の真上に無造作に置かれた、首が捻れた頭部があったからだ。
恐怖に歪んだ表情のまま、目を開ききって絶命している。
レオナルドは怒りや悲しみよりも先に、無念さを感じた。
誰もが目を疑い、レオナルドの後ろで固唾を呑んで立ち止まっている。
「何と酷い、、、」
レオナルドが呟いた。
「ラティアス殿、あなたが築き上げたモノを捨ててでも尽くした相手は、蜥蜴の尻尾のようにあなたを切り捨てた」
血溜まりなど気にもせず、両膝を地面に落とす。
「これがあなたの信じた正義か!」
右の拳を地面に打ち付け、血が周囲に飛び散った。
自分達の長の哀しみに暮れた背に、誰もが何も言えなかった。
力なく立ち上がるが、僅か振り返って「てめぇら」と怒気を孕んだ声色で言う。
そこの誰もがその言葉に直立した。
「ワシは奴等を絶対に許さん。近い内必ず根絶やしにしてくれる。着いてきてくれるか?」
誰かが合わせた訳でもなく、視線でタイミングを見た訳でもない。
だが、レオナルドの言葉に、その場の全員が一斉に「はっ!!」と当然の如く肯定の言葉を返した。
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