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グレイがテントの区域に到着した頃には、レオナルドは既に王都へ帰還したとの事で、会う事は出来なかった。
しかし冒険者の一人が言伝てを授かっていて、「明日の午後にでも本部に寄ってくれ」との事だった。
グレイとニアはそこで一晩をあかし、早朝に王都へと帰還した。
昼前に帰り付くと、ケビンが搬送された病院で会う約束をして二人は別れた。
グレイは一度自宅である『ゲルマン魔導具店』へと戻り、着替えと昼食を済ませ酒場へと向かった。
目的は一つである。
酒場は昼時ともあってかなり賑わっていたが、カウンターの端の席が空いていたのでそこに座る。
すると、グレイに気が付いたレイナが近づいてくる。
「昨日は大変だったらしいね」
グレイはその一言で昨晩の事件であると理解する。
「もう知ってんの?狭い町だな」
カラカラと笑いながら返すグレイに、レイナは眉を寄せる。
「それよりも、大丈夫なの?怪我とかしてない?」
「問題ねぇよ。まぁ、心配してくれたんだな。サンキュ」
笑顔で言いながら、「んな事より、ホットミルクください」と真剣な表情で付け加える。
レイナは苦笑いしながら「はいはい」と返した。
しばらくしてレイナが注文の品をグレイへと持ってくる。
グレイは待ってましたと言わんばかりにそれを口にし、恍惚の表情を浮かべた。
未だにこれしか受け付けられないのである。
「しかし勿体ねぇよな。こんな美味いもの注文しねぇなんて」
言いながら周りを見るグレイにしかし、レイナは首を横に振った。
「たまに注文入るんだよ?興味本意だろうけど、それに、グレイ君みたいにいつも注文してくれるお客さんもいるし」
「そうなんだ」
「うん。いつも通りならそろそろ来ると思うけど」
言いかけた時、グレイの二つ隣のカウンター席に一人の少女が座った。
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