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「凛ちゃん」
「一ノ瀬、落ち着け」
陽と坂本先生がほぼ同時に声を上げる。
呼吸を整えるために息を大きく吸い込んだ。
「中止にしないでください。お願いします」
坂本先生が私を見て溜め息を吐く。
「一ノ瀬。お前の気持ちは分かる。でも仕方ないだろう。仮にこのまま実行するとして、3組の、赤団のパネルは一体どうするんだ? 一つの団だけパネルがない状態で体育祭をしても、みんなが同じ気持ちで参加できないだろう」
「……直します」
「あのなぁ」
坂本先生がやれやれと言いたげに頭を抱える。
目を反らしたら負けだ。震える身体に力を入れて声を振り絞る。
「パネルは、直します。直ったら、審査も展示も中止にしなくてもいいんですよね?」
先生が溜め息を吐いて、机上の写真を私に突きつける。
「この状態の物を一体どうやって直すつもりだ。体育祭まで1週間ないんだぞ? 今から直すなんて不可能だし、こんなことが起こった以上、例年通りに実行するのは難しい。だから、今年度は中止の策をとろうと決まったんだ」
「でも……」
スカートを握りしめていた指先にさらに力が入る。
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