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「だから、直すよ。周りが何と言おうと、絶対に間に合わせる。たとえ誰も協力してくれなくなって、私1人になったとしても」
スケッチブックのページを千切って差し出す。
「追い詰められてなんかない。むしろ逆。たぶん陽が思ってるよりずっと、私は我儘で諦めが悪い」
陽が差し出した紙に視線を落とす。
それは頭の中に生まれた新たな案を描き出したものだった。
『元通りの綺麗な状態に作り直すのは、不可能』及川先生のあの言葉で気付いた。
ならば元通りにするのをやめたらいい。今ある素材で今までみんなが作ったもので、新しく作り直せばいいんだ。
陽が紙を見ながら右手で口元を覆った。そして大きく息を吐き出す。その隙間からは微かに笑みが漏れた。
「ほんま……敵わんな」
そして真剣な顔で私を見る。
「前言撤回。もう止めへん。2人でもやろうや。直そう、パネル」
昨日職員室で私に賛成してくれたときとは明らかに違う、1ミリの躊躇いも嘘もない真っ直ぐな瞳だった。
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