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時間はあると言ってもほとんどないに等しい。体育祭までの日程を考えると、今週中には制作に入らないと間に合わない。
そんな気持ちがまた焦りを生む。焦っても仕方ないのは分かっているけれど、これじゃあ負の連鎖だ。
陽の励ましの言葉も、全く気休めにならなかった。
彼は弱ったなぁという風に頭を掻くと、再び持っていた紙の束を上から捲り始める。
いつもお喋りな彼がこんな風に口を閉ざすのは、真剣に何かを考えているときだ。まだ数日の付き合いだけど理解できた。その何かというのが、今は私のためのものであることも。
「凛ちゃん」
しばらく経って陽が上擦った声で私の名前を呼んだ。何か閃いたらしい。
鉛筆を動かす手を止めて顔を上げる。
「見てもらおうや、みんなに」
「見てもらうって……それを?」
陽が持っている原画の束を指さすと、彼は大きく頷いた。
「俺1人じゃ意見にも限りがあるし、センスもないし、参考にならんと思うんよなぁ。やからさ、みんなにも意見もらってみよや!」
「みんなに……か」
良いアイデアだとは思う。
パネルは体育祭当日、審査員の得点と生徒からの投票の結果を合計して審査することになっている。だから今のうちに第三者の意見を聞いておくのは非常に参考になる。
「でも……」
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