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「最近仲ええよな。真柴と」
一部始終を見ていた陽が呟く。
「うん。パネルの作業もいつも来てくれて、割と声掛けてくれるから」
陽が大きく息を吐く。
「はぁー。このままやと真柴に凛ちゃんを取られそうやな」
「何言ってるの。陽だって蘭と仲良いでしょ」
言葉に出してから後悔した。冗談だと分かっているのに、これじゃまるで私が本当に蘭に嫉妬しているみたいだ。
「うん。仲ええよ。実行委員一緒やしなぁ」
私がこんなに頭を悩ませているのに、陽は平然と会話を続ける。でも下手に突っ込まれるよりはありがたかった。からかわれでもしたら、たぶん否定できない。
上手な距離の取り方が分からない。
前はもっと何も考えずにできていたはずなのに――。
急に鳴り響いた音に、無意識に噛み締めていた唇を緩める。
「あーあ。時間切れ」
陽がポケットからスマホを取り出して、残念そうな顔で画面を眺めている。恐らく休憩終了前にアラームをセットしていたのだろう。
「戻らな怒られるな。あ、そうや」
ふと思い出したみたいに、陽が画面を見ていた顔を上げて私に話し掛ける。
「体育祭の日の夜なんやけど」
「夜?」
「うん。今、クラスの打ち上げを蘭ちゃんと計画しよって……来れる?」
「打ち上げ……」
打ち上げはおろか、クラスの行事なんて一度も参加したことがない。いつもなら絶対に行かない。
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