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「この時間に会うの珍しいね」
隣に並ぶ陽に話しかける。
「ほんまやなぁ。今日はリレー練がないから」
そうか。雨だからだ。私にとってはいつも通りの時刻だが、陽は晴れていたら今頃校庭で走っている頃だ。
「ラッキーやわ」
陽がフフッと笑う。
「睡眠時間が増えて?」
「それもあるけど……それよりも朝から凛ちゃんに会えてかなぁ」
陽がいたずらっ子みたいに笑みを浮かべる。照れ臭くなって慌てて目線を反らす。
順調だったと思う。
だから、ずっと恐ろしかった。
いつか壊れてしまうんじゃないかって。
「陽! 一ノ瀬もいる。ちょうどよかった」
廊下の向こうから走ってきた内田が、目の前で足を止める。
「うっちー、朝から何バタバタしよん?」
「いいから、ちょっと来いって! なんか大変なことになってるらしい」
血相を変えた彼の様子に、とてつもなく嫌な胸騒ぎがした。
「何それ? どういうこと?」
「俺もよく分からない。けど、とりあえず見に行ったほうが早い」
鞄を抱えたまま、早口で話す2人の後をついて行く。
進んでいるのは教室ではなく体育館へと向かう廊下だった。
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