プロローグ

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プロローグ

 大好きな彼が目の前に立っている。  口元が微かに動いて、私に向かって何かを訴える。でも、よく聞き取れない。  もう1回言って。  そうお願いしようにも上手く声が出せなかった。  どうすればいいか分からずにもどかしさを感じていると、彼は突然私に背を向けて歩き始めた。名前を呼ぼうにも、喉元まで出かかった声は音になって届くことはない。  慌てて彼を追いかけた。走って、走って、ただがむしゃらに息が切れるほど走った。  しかし歩いているはずの彼の背中はどんどん遠ざかっていく。どれだけ全力で追いかけても、決して追いつくことはない。  待って。お願い、待って。  やっと声が出せたと思ったのに、その瞬間、遠くに見えていたはずの彼の後ろ姿がパッと消えた。  そしてゲームオーバーを告げるように、一瞬で目の前が真っ暗になる。
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